松阪証券 社長日記
企業人として、三重県で生業を営む者として、日々の発見、気づきなどを気まぐれに書きとめて行きます。
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食料自給率のナゾ その3
前々回、前回の記事に次ぐシリーズ第3弾、まだお読みいただいていない方は下記の記事から順にお願いします。

食料自給率のナゾ
食料自給率のナゾ その2

前回の記事本文でご登場いただきました農業技術通信社の浅川芳裕氏は、この食料自給率のナゾについて、著書「日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率」 (講談社プラスアルファ新書)、さらには著書のサマリーに当たる「食料自給率のインチキ」という小論をお書きになりました(文藝春秋2009年1月号)。その小論を読んだ当時の農林水産大臣、石破茂氏が激怒、課長クラスから文藝春秋の編集部に抗議があったそうです。「訂正しろ」「反論の論文を掲載させろ」ということでした。20項目ぐらいの質問状が来たので全部に答えたら、「今回の話はなかったことにしてください」と抗議を引っ込めたとか。

浅川氏はこうもおっしゃっています。「輸入農産物の中で、日本で生産できるものはたくさんあるんです。今は、海外にオーダーした方が良質のものが確実に納品されるから輸入しているんですよね。一つひとつの農産物について丁寧に対応策を考えていけば、輸入品に対抗できる。さらには、厳しすぎる国内の品質基準を国外市場の基準に合わせるなどすれば、輸出だってどんどんしていけるでしょう。すでにシンガポールの市場では、日本、中国、オーストラリアの野菜が三つどもえの戦いをしているんですよ。」

食料危機も杞憂に過ぎないとし「世界の食料供給量は、人口増加ペースよりも高い水準で増えています。過去40年の人口増加率は189%ですが、穀物の増産率は215%です。26%も上回っているんです。その結果、2009年末時点で、世界の穀物在庫は消費量の約20%に当たる4億5000万トンもあります。足りないどころか、むしろ過剰な生産と在庫に苦しんでいるということです。」

さらに、「そもそも食糧危機の原因は農業問題じゃない。ほとんどが購買力の低下とか物流の遮断が原因なんですよ。例えば、戦争が起きるとか、無政府状態に陥るとか。農業の話ではない。需要が増えれば、生産者は増産するんです。現在の需要に対して50年後に増産するわけじゃない。毎年、需要と価格を見て生産量を調整しているんです。小麦だけでも2007年から2009年にかけて世界で8000万トン増産されましたから。2007年に小麦粉の値段が上がったというシグナルだけで、農家は「俺も小麦をもっと作付しようかな」と考えた。それで8000万トン増えたんです。それが経済ですよ。また、世界中に遊休地というのがいっぱいあるわけです。既存の農地を全部使えば、200億人分ぐらいの穀物はつくれるんじゃないですか。なぜつくらないかというと、それだけの需要がないからですよ。」

う~む、うなずけるご意見ばかり。確かに素人が考えても、我が国の減反政策はおかしな部分がたくさんあります。農林水産省の使命は、食料自給率を引き上げることのはずです。自給率を高めると言いながら減反しているんですから、完全に理論矛盾しているのではないでしょうか。

これは農水省に限らない話ですが、そもそも省の役割は何なのかという見直し、再点検が必要なのかもしれません。農水省は「農家保護」と「消費者保護」を行き来していますが、本当はどちらでもない。本来の役割は、農家を守ることでも、消費者を守ることでもありません。農産物、家畜が被害を受けないように、国家的な規制と制度をつくるのが農水省の役割ではないでしょうか。

だがしかし、現実はそう簡単ではありません。何しろ、日本の農林水産省職員一人当たりの事業的農家数は7人。対して米国は600人。仮にあるべき本来の役割に専念し、米国並みの職員数に人員削減するとしたらいったいどうなるのか… 単純に計算しますと、日本の事業的農家数600人に対する農林水産省職員数は85.7人ですから84~85人が職を失うことになります。職員数は何人なのか不明ですが、何と、比率にすると98.8%以上の職員が解雇されることになるのです。

ちょっとお遊びです、逆説的に考えてみましょう。小社(松阪証券)の社員数は2012年2月現在で20名(役員を除く)。民間企業ですから、余剰人員は極力発生しないように努力しています。この状態を米国並みとしましょう。ではでは、我が国の農林水産省並みにしてみたら、社員数は20名×85.7倍=1,714名となります。恐ろしい数値が出てしまいました。恐らくわずか数ヶ月で債務超過に陥ること間違いなし!

我が国の財政がどんどん悪化している理由がよく理解できた、そんな気がしているのは、私だけではないはずです。


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食料自給率のナゾ その2
前回の記事、「食料自給率のナゾ」の続編です。前回記事をお読みでない方は、こちらからお願いします。

さてさて、それでは参りましょう。

なぜ農林水産省は食料自給率が低いと都合がよいのでしょうか… 推測するに、一度巨大化した組織を縮小するのは容易なことではないからです。つまり必要がなくなってしまった農林水産省の役割を、国民から見た時には必要であるかのごとく装っている、そうです自己の保身のための偽装工作なのです。

例えば農水省役職員一人当たりの事業的農家数を見てみましょう。ちなみに、我が国と比較して食料自給率が高い米国のそれは600人です。それに対して我が国は、皆さん驚くことなかれ、何と7人にすぎないのです。それぞれの事情があるとはいえ、効率的には100倍弱の差があるとわけです。

農業技術通信社の浅川芳裕氏によると…
「そもそも農水省は農業を振興する機関のように見えるかもしれないが、本質は食料供給のための統制組織の名残にすぎない。明治期から独占的な食糧輸入商社のような機能をしてきた。輸入した食料を右から左に動かすだけで大きな利益を生み出せる。カロリーベース自給率が現れた(農林水産省が声高に食料自給率の低さを訴え始めた)時期と、独占権益が失われる自由化交渉のタイミングが重なるのは決して偶然ではない。」と断言していらっしゃいます。

ですから浅川氏は、我が国農業の衰退は国民の錯覚だともおっしゃっています。例えば農産物の生産量について。年々減少していると考えている人が多いかもしれませんが、実際には1960年の4,700万tが2005年には5,000万tへと300万t増産。しかも、農家数はその間に1/6に減少しており、1人当たりの生産量は過去40年あまりで6倍以上に向上しているそうです。

農業大国かどうかを判断する国際的指標「農業GDP」で見てみても、2010年の統計で我が国は堂々の第5位にランクイン。農家1人当たりでも第6位になるとのことです。ランキングだけから判断すると、立派な農業(GDP)大国のレベルとも言えます。ちなみに「農業GDP」とは、農業生産活動を通じて一年間に生み出される付加価値の総額です。

これらの強い農業を支えている要因の一つが品種改良技術ですが、これも世界でトップクラスは間違いありません。イチゴを例に挙げてみると、世界で約600種ある登録品種のうち、180種以上が日本の保有で世界一、シェアは30%以上になります。これにはやはり理由があり、世界の農業研究開発予算のうち、こちらも約30%を我が国が占めているそうです。そう言われてみると、各県にある農業試験場や農業高校、国立大学の農学部など、我が国は農業を学び研究する場に不自由することなどないお国柄です。

本当はこんなに強かった日本の農業。そしてこんなに余剰人員を抱えていた農林水産省。食料自給率40%のわけは、こんなところにあったようです。


食料自給率のナゾ
日本の食料自給率はどの程度か、皆さんはご存知でしょうか。はっきりとした数字は把握していないかもしれませんが、「大体の水準は知っている」という方がほとんどだと思います。農林水産省の発表(http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/pdf/22slide.pdf)によると、平成22年度の食料自給率は39パーセント。ただし、これは「カロリーベース」と明記されており、そのお隣には「生産額ベース」の69パーセントという、あまり国民の知らない高い数値が併記されています。この二つの数値、いったいどちらを信頼すればよいのか、あまりにもかけ離れた数値だけに、その意味や計算方法を調べてみることにしました。

まずは私達が慣れ親しんだ4割程度、「カロリーベース」から。農林水産省のHPによると…

「日本食品標準成分表2010」に基づき、重量を供給熱量に換算したうえで、各品目を足し上げて算出。これは、1人・1日当たり国産供給熱量を1人・1日当たり供給熱量で除したものに相当。
カロリーベース総合食料自給率(平成22年度)=1人1日当たり国産供給熱量(946kcal)/1人1日当たり供給熱量(2,458kcal)=39%

続きまして私たちのあまり知らない「生産額ベース」の方は…

「農業物価統計の農家庭先価格等」に基づき、重量を金額に換算したうえで、各品目を足し上げて算出。これは、食料の国内生産額を食料の国内消費仕向額で除したものに相当。
生産額ベース総合食料自給率(平成22年度)=食料の国内生産額(9.7兆円)/食料の国内消費仕向額(14.1兆円)=69%

ここで、もう一度「カロリーベース」に戻ります。計算式の分母の部分に注目してみましょう。1人1日当たり供給熱量(2,458kcal)の計算方法は、下記の通りとなります。

1人1日当たり供給熱量(2,458kcal)=国産供給カロリー+輸入供給カロリー+ロス廃棄カロリー

さて、既に皆さんはお気づきだと思いますが、計算式の最後に出てくる≪ロス廃棄カロリー≫とは何でしょうか?現実の食卓では「小売店の店頭にならびながら」「食卓にのぼりながら」廃棄されてしまう食材量(カロリー)が相当数にのぼります。そうです、廃棄された食品が多ければ多いほど分母が大きくなる、すなわち食料自給率が低くなるような仕組みとなっているのです。

実際に、近年廃棄されている食材は年間900万tに及ぶそうで、食料自給率の計算の分母となる供給カロリーは2,458kcalですが、日本人が一日に摂取する平均カロリーは1,800kcalほどですから、それ以外の650kcalは食べられることなく廃棄されています。分母を摂取カロリーとして食料自給率を「国民1人1日当たりの国産供給カロリー÷国民1人1日当たりの供給カロリー」として計算しなおすと、日本の食料自給率は50%以上になります。果たして日本の食料自給率が国際的に本当に低いのか… 疑問が残る結果となりました。

続きまして主要先進国との比較について、農水省が公表しているグラフをご覧ください。
http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/pdf/2007foreign-country-suii.pdf

グラフにある各国の自給率は、日本の農水省が独自に推計したものです。日本を除く海外諸国はカロリーベース総合食料自給率の計算をしていないとか。とある農業関係の雑誌がこの計算方法について農水省に取材したところ、「食料安全保障の機密上出せない」との回答があったそうです。

数字のマジックならぬ農林水産省のマジック、これで「自給率を上げることが我々の使命である」という農林水産省の公然としたミッションが出来上がりました。農林水産省は、我が国の食料自給率が低い方が都合がいいわけです。断言はできませんが、そうとしか考えられない結果となりました。次回以降で、その辺りを更に掘り下げてみたいと思います。




プロフィール

証券人(しょうけんびと)

Author:証券人(しょうけんびと)
約13年間の大和証券勤務を経て、1998年1月松阪証券に入社
2006年4月代表取締役社長就任
現在に至る



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